20081208

裁判員制度

先日、NHKで裁判員制度に関する番組をやっていました。
「あなたは死刑を言い渡せますか」
タイトルからして、ものすごいことになっています。
実際、問題は結構深刻です。
番組では「模擬裁判」という形式で示されていましたが、「死刑」の判決、つまり人の生を終わらせるか否かという判断を一般の素人が求められるということは、想像以上に酷な体験です。さらに裁判員には「守秘義務」があり、裁判の内容を他言したり、誰かに相談したりということは許されないのだとか。これは辛いです。いくら犯罪の被告とはいえ、ある人物を死に至らしめたという体験を、一生、自分一人で抱え込んで生き続けなければならない。僕には出来そうにもありません。
しかも、裁判に際しては、普段のニュースでは目にすることの無い凄惨な証拠や資料にも目を通すことになるでしょう。スプラッター系が大の苦手の僕でなくても、堪え難い出来事ではないでしょうか。
誰が何のために作った法律か知りませんが、多くの人にとってかなりの苦痛を強いるのではないかと思ってしまいます。

そう。誰が何のために?
番組を通して見て、最も疑問が残ったのは「なぜこの制度が出来たのか」ということです。
いくら考えてもさっぱりわかりません。誰にどんな利益があるのか?

出演している法整備に関わった人や法曹たちは、皆、口を揃えて「裁判制度は今のままではいけない。市民感覚を判決に反映させなければならない」と言います。
しかし、「今のままではいけない」と言い出さなければならない人物とは誰か?
法曹関係者が自ら言い出すというのはあり得ない。誰からも何の批判も無いのに、自ら自己批判を行い、自己改革を断行するなどという人はまずいないわけです。
国民の声か?番組では、大半の国民が「この制度に参加したくない」と答えているというアンケート結果が示されていました。そもそも、「人がどう裁かれるかに口出しが出来ないなんておかしい」などと声高に主張する国民がそれほどたくさんいるというのも考えにくい。
政治家か?この法律によって何かしらの天下り先が確保されているわけでもなさそうです。どこかの地方や団体になんらかのメリットがあるのでしょうか?それも考えにくい。
では誰が?何のために?
正直なところ、どんな利益が目指されているのかさっぱりわからない。
これが、この制度の一番不気味なところです。
考えれば考える程、怖くなってきます。

それにしてもNHKは、番組の一部に生放送の討論を組み込んでいました。
すごいことだと思います。
「生の意見を包み隠さず伝える」という気迫が感じられます。
もちろん、出演者の人選に際してなんらかのバイアスがかかっていることは否めないのですが、それにしても「生放送」という一切編集の効かない手法を採用するとは。しかもNHKにはCMという逃げ場もないし。
実際、議論は白熱し、やや迷走の気配が漂う瞬間もありましたが、全体としてはとても意義のあるものだったと思います。
「番組のデザイン」としては、かなり大胆で、評価に値するものなのではないでしょうか。

0 件のコメント: